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胃炎と胃がん

胃炎と言われたらどの様に考えるか?ピロリ菌と萎縮性胃炎

 胃炎とは何でしょう。いろいろな胃の病態を一言でいうと、この言葉に凝縮され、しかも内視鏡所見からの立場、バリウム造影からの立場、症状からの立場、病理医からの立場で定義がそれぞれ異なるため、非常に理解するのが難しいのです。つまり、人によって、胃炎と同じ様に発音されるのに、考えるイメージが違っているのです。

 病理のプレパラートを顕微鏡で観察し、胃透視の読影や胃カメラも3000件以上やってきてはじめて理解が可能な病名だと思っています。しかも、この疾患を理解するのには、ヘリコバクターピロリ菌の感染と、胃炎の炎症の強さと、時間の経過とを考えなければ、決して理解できません。

 この違いを理解するまで説明することは時間上、外来では不可能ですが、結論から言えば、たとえ胃炎と診断されても、胃炎なんて誰でも多かれ少なかれもっているのであり、胃炎ということは日本人に向かって、あなたは日本人です、といわれたのとあまり変わりません。

 しかし、病院やクリニックで胃炎といわれショックを受ける人は結構沢山いると思います。

 本当に重要なのは、胃炎の程度や種類によっては胃がんのできる頻度が違うため、胃炎の中の分類が重要なのです。

 胃炎の中でも次の胃炎はさほど胃がんの頻度は高くないと考えられるもの

1.表層性胃炎  胃の萎縮は強くなく、くし状の発赤が胃炎の主体と考えられるもの。

2.急性胃炎    粘膜の発赤、びらんが主体で、粘膜の炎症が急激に起こったと考えられるもの。原因としてストレスやアルコールや鎮痛薬など。

 胃炎の中でも胃がんの発生の頻度が高いと考えられるもの ピロリ菌関連慢性胃炎
1.高度萎縮性慢性胃炎 
 長い間ピロリ菌が感染していたために、じゅうたんが長年使っていると擦り切れるように、胃の粘膜の厚みがなくなり萎縮した状態、むしろ、萎縮が強くなり、ピロリ菌すら住みにくい状態になったとも考えられる。胃がんの頻度は年齢を考えなければ、年率0.5%以上にもなり、男性で60歳以上の人は年率1%以上の確率で胃がんが発生してくると考えられる。ペプシノーゲン法による胃がんのスクリーニング検査はこのことを利用している。(この頻度で考えると10年で約1割に人に胃がんが発生することになりますが、胃がんの発生の時期は予測不能ですので毎年胃カメラにて検査するのが強く推奨されます。)

     右は高度萎縮性胃炎にできた胃がんです。

     早期がん(粘膜癌)であり、大学病院に紹介し、

     内視鏡的粘膜下層剥離術にて開腹手術をすること
     なく治療は終了しました。

     治療後、ピロリ菌が陽性であったため除菌しました。
  
2.慢性肥厚性胃炎 
 ピロリ菌の感染にて胃の襞がふとくなり、全体的にむくみが強くなった状態、臨床的に急速な進展を伴うような胃がんは、萎縮の強い胃炎よりこちらのほうが発生が多いという学者もいる。一部に萎縮、一部に肥厚を伴う場合には慢性肥厚性萎縮性胃炎などともいう。

 1.2のような胃炎の人は、一年に一度胃の内視鏡を受けることをお勧めします。(これ以外の人でも、平均的に、胃がんは、がん年齢になれば0.1−0.5%くらい年間に発生してくると考えられるので、女性で胃の粘膜に萎縮のない上にピロリ菌が陰性のグループ以外の人は、胃カメラを一年に一度受けられたほうがよいでしょう。)

 胃の萎縮の程度とピロリ菌の感染に関しては血液検査や尿検査でわかりますが、今のところ胃カメラや胃透視を受けないと、ピロリ菌の検査の健康保険の適応はなく、胃の萎縮の検査(ペプシノーゲン法)は保険適応はないため自費となります。
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 二つの検査(ピロリ菌と胃の粘膜萎縮)を受けても6000円程度です。当院の外来の血液検査で測定可能です(結果は約一週間かかります。)。自分の胃がんの可能性がどの程度なのか、採血でわかりますので下の表から見て判断してください。
 下にヘリコバクターピロリ感染、胃粘膜萎縮と胃がんのリスクの関係の図を示します。 (斉藤大三:胃癌オッズ比からみた血清ペプシノーゲン値. ペプシノーゲン法 医学書院、1998より一部改変)
ピロリ感染 胃粘膜萎縮
 なし(高PGT/U比)             あり(低PGT/U比)
陰性
A)低リスク(年率0.1%以下)   D)最も高リスク(年率0.5%以上)
↓                           ↑
陽性 B) 高リスク       →      C)さらに高リスク
 これを見てわかるのは、胃がんのリスク低いのはピロリ菌の感染もなく萎縮もないグループで、次はピロリ菌が感染していても萎縮のないか、あるいは弱いグループで、ピロリ菌陽性で萎縮のあるグループがこれに続き、最も高いリスクを持つのは萎縮が強くなりすぎてピロリ菌が住めなくなったグループと考えられます。B以上のグループに入ったら定期的に胃カメラや胃透視にて画像診断を受けた方がいいでしょう。特にDのグループに入ったら必ず胃カメラを毎年受けましょう。Aのグループで特に女性は一生の中で胃がんになる確率はおそらく1%以下だと考えられますので、胃痛などの症状や胃がんの家族暦などが無ければ、定期的なバリウム検査や胃カメラの必要はないでしょう。 2005年に東大のグループがイギリスのGUTという雑誌に発表した前向き研究ではさらに詳細に、正確にデーターがでています。 下にその要約の翻訳を掲載しました。
日本人に対しての前向き研究であり、信頼性は高いと考えます。
          
【ヘリコバクターピロリ菌の抗体と血清ペプシノーゲンから予測される胃がんの発生についての研究(内視鏡を用いた追跡調査研究)】(Gut 2005;54:764-768 T Watabe.et al)

背景と目的:

ヘリコバクターピロリと、胃(粘膜)の萎縮はともに胃がんの危険因子である。われわれ(東京大学消化器グループ)はヘリコバクターピロリ菌と胃の萎縮状態に関連した胃がんの発育の自然史を明らかにすることを目的とした。

対象と方法:総計9293人の健康診断の受診者がこの前向き研究の候補者となった。そのうちの6983人が経過観察のプログラムに再び参加した。

対象(6983人)は最初の胃内視鏡が施行された時に血清学的状態に従い4つのグループに分けられた。groupA(3324人)ペプシノーゲン法で萎縮がなく、ヘリコバクターピロリ抗体が陰性。groupB(2134人)は萎縮がなく、ピロリが陽性、groupC(1082人)は萎縮があり、ピロリが陽性、そしてgroupD(443人)は胃粘膜萎縮があり、ピロリが陰性のグループ。毎年の胃がんの発生は胃内視鏡(胃カメラ)にて測定した。

結果
平均観察期間は4.7年で平均の内視鏡の回数は5.1回であった。毎年の胃がんの発生率はgroupAで0.04%、groupBで0.06%、groupCで0.35%、groupDで0.60%であった。groupAに対しての相対リスクはgroupBで1.1倍、groupCで6.0倍、groupDで8.2倍であった。性、年齢、グループが多因子解析の独立した危険因子であった

結論:血清のペプシノーゲンとピロリ抗体の複合判断は、胃がんの発生の良好なマーカーとなる。

  グループA グループB グループC グループD
粘膜萎縮
(ペプシノーゲンI70ng/mlかつ、I/II比3.0以下)
なし なし あり あり
血清ヘリコバクター・ピロリ菌抗体 陰性 陽性 陽性 陰性
60歳以下 女性 0/971
0%/y
1/571
0.04%/y
0/319
0%/y
0/92
0%/y
男性 5/2103
0.1%/y
1/1307
0.02%
11/563
0.4%/y
4/237
0.4%
60歳以上 女性 0/93
0%/y
1/74
0.3%/y
1/50
0.5%/y
2/31
1.5%/y
男性 2/157
0.3%/y
3/182
0.4%/y
6/150
1.0%/y
6/83
1.8%

左はGut 2005;54:764-768 T Watabe.TMitsushima、M Omata et.al)
Predicting the development of gastiric cancer from combining Helicobacter Pylori antibodies and serum pepsiogen status: a prospective endoscopic cohort study の 図2を改変
 年齢と性別と血清学的な状態の違いによる
胃がんの年間の発生率




 胃がんは転移してしまえば、その怖さは膵臓がんや肺がんと変わりません。転移を起こす前に治療をすることが大切です。膵臓がんや肺がんは早期発見が難しく、いくら発見に努力しても報われない癌です。一方、胃がんや大腸がんは気をつければ、死ななくてもよい癌です。胃がんから自分を守るために自分の胃の状態を知りましょう。
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