逆流性食道炎の症状、検査、治療

逆流性食道炎はどんな病気?


 簡単に言うと、胃から食道へ胃酸が逆流する病気です。胸焼けなどの症状がつらく生活の質が落ち、さらに、慢性の咳や、耳鼻科領域などの多くの病気が胃食道逆流により引き起こされることもわかってきました。ひどくなると、食道潰瘍から吐血をする人もいます。また、欧米人の食道がんは腺がんというタイプのがんが多いのですが、胃食道逆流から引き起こされるバレット食道から発生してくることが知られています。最近、日本でも、どんどん増えている逆流性の食道炎を下に詳しく説明していきます。

 
概念 
 胃酸の主成分は塩酸で、これは、肉を溶かしどろどろにしてしまう程のとても強い酸です。胃はいわば人間に内臓した溶鉱炉のようなものです。溶鉱炉の胃と食道の間には括約筋があり、この括約筋が横隔膜と協力して、蓋のような働きをしています。

 胃食道逆流のない健康な人の括約筋は普段はきっちりと閉まっています。また、この括約筋と横隔膜の圧迫で構成された蓋は結構優秀な蓋で、嚥下時には開き、食べ物を通過させ、胃の内圧が上がりすぎると開いてげっぷを出して、ガス抜きをします。(この蓋が閉まりすぎて、開かない病気もあります。アカラシアという比較的珍しい病気です。)

 簡単に言うと、胃酸の食道への逆流(胃食道逆流:GER)とは、なんらかの原因でこの蓋がゆるくなったり、外れてしまったために起こる現象です。具体的には食道裂孔ヘルニアの存在や、腹圧の増加、圧迫骨折などによる前屈姿勢などが原因になります。

 本来、食道は中性です。ですから食道粘膜には胃粘膜と異なり、強い胃酸に対しての防御機能がありません。その食道に胃から胃酸が逆流することにより、症状が起こってくるのが逆流性食道炎です。

 
症状と診断と検査

 逆流性食道炎の診断はどのようにすればよいのでしょう。癌などの異常を鑑別するため、可能な限り胃カメラ(上部消化管内視鏡)を行うのは基本です。しかし、症状を調べるだけでも、胃食道逆流現象の有無の診断はかなり可能だといわれており、自己記入式のアンケート調査だけで60-70%程度の診断がついてしまうといわれています。Dentらの考案した自己記入式質問表(QUEST)や、この日本版などの問診表(QUEST日本語版)(永野ら、GERDの診断断に関する研究-上部消化管症状を訴える患者におけるアンケート(QUEST)による検討.新薬と臨牀:841-851,1998)、さらに草野らの考案したFSSG(Frequency Scale for the Symptoms of GERD: J. Gastroenterol.,39,888,2004)などの問診表が使われています。

 当院では草野先生の考案した問診表(Fスケール)を参考にさせていただいています。この表で8点以上の人は逆流性食道炎の可能性が高いといえます。このアンケートの中の症状が逆流性食道炎の典型的な症状です。

あなたは以下に上げる症状がありますか?
ありましたらその程度を記入欄の数字(スケール)に○を付けてお答え下さい。

質問 記入欄
ない まれに 時々 しばしば いつも
1 胸焼けやけがしますか? 0 1 2 3 4
2 おなかがはることがありますか
0
1 2 3 4
3 食事をした後に胃が重苦しい(もたれる)ことがありますか? 0 1 2 3 4
4 思わず手のひらで胸をこすってしまうことがありますか? 0 1 2 3 4
5 食べた後気持ちが悪くなることがありますか? 0 1 2 3 4
6 食後に胸焼けがおこりますか? 0 1 2 3 4
7 喉(のど)の違和感(ヒリヒリなど)がありますか? 0 1 2 3 4
8 食事の途中で満腹になってしまいますか? 0 1 2 3 4
9 ものを飲み込むと、つかえることがありますか? 0 1 2 3 4
10 苦い水(胃酸)が上がってくることがありますか? 0 1 2 3 4
11 ゲップがよく出ますか? 0 1 2 3 4
12 前かがみをすると胸焼けがしますか? 0 1 2 3 4
その他、何か気になる症状があればご遠慮なくご記入ください。
Fスケール問診表(M.Kusano et al: J.Gastroenterol.,39,888,2004より一部改変)

上部消化管内視鏡(胃カメラ)
 逆流性食道炎の内視鏡所見の分類ではLA分類が有名です。gradeN、Mといった所見の殆ど認められないものから、gradeC、Dという潰瘍を伴うような著しいものまでありますが、潰瘍や白濁がなくても、典型的な症状があり、胃食逆流の存在が予測される場合は、治療を開始しますから、内視鏡所見はあくまで参考と考えています。しかし、まったく画像診断を行わないと、がんが存在していた場合には診断がつきませんし、また、食道裂孔ヘルニアの存在や逆流性食道炎の内視鏡的重傷度もわかりません。治療開始前には画像診断の大切さを患者さんにお話させていただいています(胃カメラがどうしてもイヤな人は胃カメラなしで治療を開始いたしますが、画像診断をしないで長期投与をしていると保険で査定がくる場合がありますので、治療継続が困難になる場合もあります)。治療の効果判定は内視鏡所見も参考になりますし、症状の消失でも判断します。⇒TKクリニック(名古屋市瑞穂区)の胃カメラ

 大学病院のレベルではPHモニタリング食道内圧測定も施行したりしますが、実は結構大変な検査です。あくまで検査なので、大変な思いをしても症状がよくなるわけではありません。薬を飲んでもなかなかよくならないなど、もっと精査が必要と考えられる人は大学病院で検査してもらうとよいと考えています。

治療
 あたりまえですが、逆流性食道炎の治療の基本は、食道内に酸が逆流するのを防ぐことです。本来、胃酸の分泌が盛んなことは、消化の面からも、生態防御の上(細菌が強酸で死滅するからです)からも悪いことではありませんが、胃の蓋が開いている状態ではむしろ、メリットよりデメリットの方が大きくなります。自然な方法で蓋が閉まらなければ、外科的治療でなんとか蓋を閉じるか、薬物で胃酸の濃度を抑えることになります。生活習慣の改善も大切です。当院では内科治療と生活習慣の指導が中心になります。

○内科的治療 プロトンポンプインヒビター(PPI)(パリエット、タケプロン、オメプラゾールなど)を内服していただきます。最近はP-CAB(タケキャブ)というさらに強く胃酸を抑える薬も登場し使用しています。また、ジェネリック薬も用意しており、長期投与ではお薬代がかなり安くなります。他に必要であれば、運動機能改善薬や漢方薬も処方いたします。

○生活習慣の改善
薬物療法で症状の改善があっても逆流を起こさないような生活習慣の改善は必要です。違うページで詳しく説明いたします。
逆流性食道炎における生活習慣の改善

○外科治療 胃カメラなどでヘルニアがあり、内服では症状がどうしようもない場合は、手術がよい場合があります。当院では手術できませんが、手術をしていただける病院を紹介させていただきます。開腹手術もありますが、腹腔鏡下の手術が発展してきました。大学病院などに紹介いたします。
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