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糖尿病の話

糖尿病の定義糖尿病の定義

糖尿病は現在、次の定義で診断されています。
下の診断基準にあてはまる場合には あなたは医療機関において糖尿病と診断されます。
糖尿病は症状から判断する病気ではなく、診断基準から判断する病気です。はじめに指摘された時、症状はないことがほとんどです。症状がないのに、病気といわれ、治療が必要と言われるのです。みなさん最初は信じられない様子です。
しかし、繰り返しますが、基準に当てはまれば、糖尿病の気があるとか傾向があるなどではなく、糖尿病なのです
糖尿病やその疑いがある人は1500万人もいます。10人に一人は糖尿病もしくはその疑いのある人です。糖尿病の子供は少ないので、大人におけるその確率の高さがわかります。

臨床診断

1.空腹時血糖値≧126mg/dl,75gOGTT2時間値≧200mg/dl,随時血糖値≧200mg/dl
のいずれか(静脈血漿値)が,別の日に行った検査で2回以上確認できれば糖尿病と診断してよい*.
これらの基準値を超えても,1回の検査だけの場合には糖尿病型と呼ぶ.

2.糖尿病型を示し,かつ次のいずれかの条件がみたされた場合は,1回だけの検査でも糖尿病
と診断できる.

(1)糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)の存在
(2)HbA1c≧6.5%**
(3)確実な糖尿病網膜症の存在

3.過去において上記の1.ないし2.がみたされたことがあり,それが病歴などで確認できれば,
糖尿病と診断するか、その疑いを持って対応する.

4.以上の条件によって,糖尿病の判定が困難な場合には,患者を追跡し,時期をおいて再検査する.

5.糖尿病の診断に当たっては,糖尿病の有無のみならず,分類(成因,代謝異常の程度),
合併症などについても把握するように努める.
疫学調査:糖尿病の頻度推定を目的とする場合は,1回の検査だけによる「糖尿病型」の判定を
「糖尿病」と読み替えてもよい.なるべく75gOGTT2時間値≧200mg/dlの基準を用いる.
検診:糖尿病を見逃さないことが重要である.スクリーニングには血糖値の指標のみならず,
家族歴,肥満などの臨床情報も参考にする

*ストレスのない状態での高血糖の確認が必要である.

 1回目と2回目の検査法は同じである必要はない.1回目の判定が随時血糖値≧200mg/dlで行われ
た場合は,2回目は他の方法によることが望ましい.1回目の検査で空腹時血糖値が
126139mg/dl
場合には,2回目には
OGTTを行うことを推奨する.

**日本糖尿病学会グリコヘモグロビン標準化委員会の標準検体で補正した値

葛谷 健ほか糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(1999)より
つまり

空腹時の血糖が126mg/dl以上、あるいは随時の血糖値が200mg/dl以上であり、別の日でも同様の結果であれば糖尿病と診断できるということ。また1回のみの採血でも確実な症状があったり、HbA1cが6.5%以上であれば糖尿病と診断してよい。ということです。
※もし、スクリーニング検査で尿糖陽性(尿に糖が混じる場合)でも糖尿病ではない場合もあり、逆に尿糖が陰性でも、絶食時には糖尿病でも陽性に出ない場合もありますから注意が必要です。

糖尿病とは、一言でいうと、インスリンが働かない病気

 糖尿病とは、摂取された糖というエネルギーの元を、細胞に送り込んでエネルギーにできない病気です。これはインスリンが働かないのが原因です。インスリンは血糖を下げるホルモンというより、糖を細胞内に入れることにより、結果として血糖が低下するのです。つまり、糖尿病とはインスリンがうまく働かないことが原因で、糖が細胞に取り込まれず、結果として、血管内に残った糖が浸透圧の異常を引き起こしたり、血管内を傷つけるけることで、動脈硬化を引き起こす病気です。インスリンの分泌の絶対量が不足する場合を1型糖尿病、インスリンの量はあっても細胞の取り込み機構がうまく働かない場合を2型糖尿病といいます。

 別の言い方をすると、糖尿病は細胞の中に入らなかった血糖がぐるぐる体中をまわり、最後は尿糖として排出される病気です。つまり摂取されたカロリーが、エネルギーとしてつかわれたり、脂肪として蓄積すらされないで、体中の血管を砂糖漬け(本当はブドウ糖漬け)にして尿から逃げていくという病気です。血管に高濃度の糖液を通し続けると、血管は早くだめになります。しかし、血管が詰まったり、破れるまで症状はでません。
 
 血糖がよほど高くなければ、高血糖そのもによる重篤な症状は起こってきません。問題なのは砂糖漬けにされて動脈硬化の進んだ血管や組織が引き起こす腎症、網膜症、神経症や脳梗塞や心筋梗塞です。これは血の中のブドウ糖の濃度と時間に比例します。つまり血糖のコントロールが悪い状態が長年続くと合併症が起こりやすくなります。このときの変化は不可逆です。

 だから、逆に自分の状態がわからなければ(今の状態で何年かするとどのくらいの割合で合併症が起こるのか?)血糖をきちんとコントロールする意味もわかりませんので、どうしても自分に甘く採点してしまいます。症状が出てきたときには元に戻りません。症状というのは、体の一部分に破壊が起きたときに起こります。ところが、血糖は全身の問題です。つまり、脳梗塞が起こりやすい状況は、心筋梗塞やその他の異常も起こりやすくなるということです。糖尿病が原因で、一箇所の異常が起こると、次々に他の部位にも症状が現れてきます。症状のないうちから血糖のコントロールをうるさくいうのは、このような理由からです。
 自分が糖尿病だとして、どのようにコントロールをつけていけばよいのでしょうか。自分はどのくらいの割合で合併症になるのかから知ることからはじめましょう。なにを指標にするのが一番よいでしょうか?
 
 現代の医学ではHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値を指標にしてコントロールしていくのが一番一般的ですHbA1cは1ヶ月から2ヶ月の血糖の指標になります。つまり患者さんが、明日は血糖の検査をするのだからと、前日にだけ食事に気をつけても関係なく、これは一ヶ月の血糖の値が反映されますので、その人の生活している時の平均の血糖の状態がわかるからです。
次の表は2004年の糖尿病のガイドラインの、空腹時血糖、食後2時間血糖の値とヘモグロビンA1cをあわせて評価したものです。
評価 不可
不十分 不良
HbA1c値(%l) 5.8未満 5.8〜6.4 6.5〜6.9 7.0-8.0 8.0以上
空腹時血糖値(mg/dl) 80-100未満 100〜130 130-160 160以上
食後2時間血糖値(mg/dl) 80-140未満 140〜180 180-220未満

220以上         
(日本糖尿病学会、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2004より改変)
 下にHbA1cを基準にした合併症の起こりやすさの資料の一つを提示します。
日本で行われた研究では熊本大学(Ohkuboら6年間の追跡調査より1995年)の研究が有名です。
糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症とヘモグロビンA1c
 横のグラフは、その熊本大学で行われた大規模臨床研究の一部です。HbA1cが7から急速に合併症の割合が増加していきます。

このような臨床研究をいくつか研究してみると、HbA1cが1%低下するごとに糖尿病性細小血管または大血管のイベントは2割程度リスクが低下し、高血糖によるリスクの増加は細小血管の方が大血管より大きいことがわかっています。

 そして血糖のコントロールが良好なほど合併症のリスクが減少するようです(閾値はないようです)。

 次にガイドラインが規定する目標値を書きます。
これを達成するために、食事、運動、薬物はセットです。

 基本的に食事の制限をしないで血糖をコントロールすることは出来ません。
糖尿病治療における目標値
(日本糖尿病学会編糖尿病診療ガイドラインより改変)

HbA1cは7%以下をめざす、(できれば6.5%以下)→合併症の率がぐっと下がるからです。

糖尿病患者さんは肥満、高血圧、高脂血症の合併が多いことから血糖のコントロールのみならず、体重、血圧、血清脂質もコントロールします。

肥満のあるものではその解消は重要であり,体重のコントロールの目標はBMI 22です(この体重 を目標とすべきですが、たとえ1 kg でも2 kg でも体重を減量すると糖尿病代謝の改善をみることがよくあります)。

血圧は収縮期血圧130 mmHg 未満,拡張期血圧80 mmHg 未満を目標とし,尿蛋白が1 g/日以上の糖尿病腎症の患者では,収縮期血圧120 mmHg 未満,拡張期血圧75mmHg未満を目標とします。

血清脂質値の目標は総コレステロール200mg/dl ,LDL コレステロール120 mg/dl 未満,早朝空腹時の中性脂肪150 mg/dl 未満,HDL コレステロール40 mg/dl 以上です。(コレステロールの値についてはいろいろ異論がありますが、総コレステロールは200程度が一番よいと考えています。)

また,糖尿病を有するものでは動脈硬化が進みやすいことから禁煙すべきであり,また,アルコールの摂取は血糖や血清脂質のコントロールを乱しがちであることから,原則として禁酒とします。

 先ほど書いたように、とにかくHbA1cを低下させること、そのために低血糖に注意しながらあらゆる手を尽くすこと、食事療法、運動療法、内服療法、インスリン療法などすべての方法を考慮します。

透析導入や失明の第一位が糖尿病です。これは血糖管理をキチンとコントロールすれば起きないのです。

とにかく、医療経済の面から考えても、まず体重や食事の管理からはじめましょう。

 また、糖尿病には、眼底検査、視力検査,眼圧検査を含めた、目の総合的判断が必須です。

 眼底に網膜症があるときには血糖はゆっくりコントロールしないと網膜症はかえって進行します。これは糖尿病のコントロールを始める、あるいは強化するときには絶対に必要な情報ですが、時々、内科医でも知らない医師もいるので、気をつけてください。糖尿病の薬物治療をはじめる場合は必ず眼科と内科の両方の科を受診が必要なのです。網膜症があるのに、急に血糖のコントロールしようとして低血糖になれば、失明の可能性すらあります。

 当院は、眼科と内科の医師が診察にあたり、1つの医院で糖尿病の管理ができるという点では、他の医院にはないメリットがあると考えています。それは情報の共有です。先述したように、内科医にとって、糖尿病のコントロールには、眼科の情報はなくてはならないものですが、眼科から紹介状を書いてもらうのにも、時間もお金もかかります。再診料や処方料も、2つの医院にかかれば2倍かかります。眼科も、血糖のコントロールの状態を把握する必要がありますが、カルテの持ち出しはできませんので、これもまた、内科から診療情報の提供を受けなければいけません。ひとつの医院で内科と眼科がカルテを共用することは、時間の無駄とお金の無駄をはぶき、安全に糖尿病を管理していくために、優れたシステムだと考えています。
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